2024/01/25 16:01
店で若いお客さんと話してると「リングをどの指にはめたら良いのか迷う」って話が出たりします。
今回のブログでは世界史のマイナー人物、アルブレヒト・フォン・ブランデンブルクとその時代からリングについて書きます。

↑ 流石のコーディネートのマインツ大司教、アルブレヒト・フォン・ブランデンブルク。指輪の映えるブラックコーデです。
「リングは着ける指によって意味がある」なんていわれたりします。ちょっと検索するとご丁寧に書いてあるのがなんぼでもヒットしますし、店でもお客さんからその話をされたりもするんですが、自分はこういう仕事だってのもあって
“あ〜、この手の話みんな好きだな。ロマンチックね〜。”
とか思ってます。
販促の為に頑張って発信してるんだとは思いますが、どの指もかっこいい意味があるというのはいくらなんでも売る側に都合が良すぎというものです。
フェアに行きたいですね。
実際、過去には“この指にリングするのは良くない”と広く信じられた時代もあります。
それが中指です。
中世ヨーロッパにおいて中指にリングを着けるのは愚か者であると信じられたため、リングは中指を避けて着用されました。アルブレヒトの不可解なリングの着用ももちろんこの俗信によるものです。
この“中指の指輪”の俗信は16世紀のうちに消滅したと考えられています。わりとこの手のものは根拠が弱く時代の移り変わりには耐えられない程度のものです。

↑ ルターとボーラの結婚式、当時聖職者の結婚は禁止されていました。このへんも改革です
因みにですね、結婚指輪を薬指にする風習は結構古く、結婚と契約の概念が結びついた古代ギリシャにルーツがあるという説が有力です。古代ギリシャでは心臓から左手薬指に導管が通っており、それは愛の導管と考えられていたため、結婚の際その薬指に指輪をはめ愛のシンボルにしたといわれています。

↑ ルターとボーラが交換した結婚指輪のスケッチです。
ただ、日本で杉田玄白、前野良沢らがターヘル・アナトミアを訳し解体新書が発行されたのが
1774年、あまり知られてないですが日本で初めて医学目的の解剖がおこなわれたのはそれ以前の1754年、京都の医師、山脇東洋らによるものです。
そして現代、我々は薬指にそんな太い血管が走ってないことは誰でも知っています。
まあ、あんまりどうのこうのいうのは野暮ってもんです。気持ちの問題です。

↑ こちらはルターがボーラに送った結婚指輪、石はルビーです。
因みにですね、薬指は薬指でも右手か左手かっていうのも同じキリスト教圏でも国によって違ったりします。婚約時は左、結婚したら右に変えるなんて地域も、さらには過去ルネサンス期には人差し指に結婚指輪を嵌めたという記録もあります。
言い過ぎは野暮ですね。あまりロマンに水を差してはいけません。気持ちの問題ですね。

↑ こちらが1526年のボーラの肖像。左手人差し指に結婚指輪を嵌めています。
日本で定着してる感のある”結婚指輪の左薬指”の風習ですら突き詰めると事実はこんなとこです。
なかなか面倒ですね。
自分はファッションリングに関してはリングのデザインやボリューム感で好きな指に嵌めてもらうことを勧めています。最初は邪魔になりにくい薬指、中指、小指が良いとは思います。ただ「この指に着けたい!」ってのが明確にあればそれで全然OKです。もちろん精神面からいってもOKです。ルールなんぞありません。
自分はお客さんにはファッションリングは自由に楽しんでもらいたいと思っています。

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